卒業生にお聞きしました!


第5回

在学生のみなさんへのメッセージ編


第5回では、深谷さんに在学生へ伝えたいことを伺いました。社会に出て活躍されているからこその視点で、ご助言をいただきます。

 

─家政経済学科の在学生に向けて、メッセージを頂けますか。

 

深谷さん:「選択肢をたくさん持つ」、そして「しなやかに生きていく基盤を作る」といいなと思います。

生き方とか働き方って、正解も不正解も無いじゃないですか。今までの教育、カリキュラムの中では〇か×かでずっと生きてきた方もいらっしゃるかもしれない。だけれども社会に出た途端、生き方には単純な正解とか不正解とかがなくなってしまうことに出会う。

もしあなたが人生の中で立ち止まることがあったとしても、困っているのはあなただけじゃないかもしれないし、働くだけが生き方じゃないかもしれない。

だからこそ、みなさんが生き方のいろいろな選択肢をたくさん持てると良いなって考えています。専門性を深めることも必要ですけど、やっぱりその先を見通してということを考えたときに、どうやって環境に応じてしなやかに生きていける基盤を作るかっていうことが大事だと思うんですね。

 

選択肢を広げるには、学ぶことや経験することに対して選り好みしないことが大切! 専門性を深めるだけでなく、テレビ・映画・本を観たり、人とのつながりをたくさん育てたり、大学生活では時間も場所もみなさんには与えられているので、食わず嫌いせず何でも関わり吸収していってほしいです。コロナ禍の今はもちろん少なからず制約もあると思いますが、その代わりにオンライン上でのつながりづくりなど新しい方法が選択肢に加わったともいえると思います。

 

社会科学の中に3つの資本―「経済資本」・「文化資本」・「社会関係資本」―という考え方があります。これこそ人が安心して幸せに暮らしていくために大事な要素だと考えています。

この3つは簡単に言い換えると、順にお金、興味関心、人とのつながりの資本のことを指しています。この3つの資本をどうやって増やしていけるかなっていうことに興味を持っていただけるといいですよね。

この3つの資本は循環しています。例えば興味関心を増やすことで人との繋がりが広がり、新しい情報が入ってきて、そのことが私の場合は工藤啓氏と出会って新しい仕事を得ることにつながりました。そしてそのことにより生活に必要なお金を得ることもできるようになったわけですね。このような資本の循環から生きていくための基盤ができてくると考えています。この点はみなさんにも是非意識してみることをお勧めしたいですね。

第11回日本パートナーシップ大賞 授賞式(2015年)

─最後に、大学生時代にやっていてよかったことと、やっていればよかったということがあれば、お伺いできればと思います。

 

深谷さん:1点目として指導教官であった広田先生と、もっとお話しをしておけば良かったです。

日本の女子労働の世界で、先生がどれだけの研究・活躍をされて来られたのか、社会人になってから知ることになったことが、とてももったいなかったと思います。広田先生がご存命の間に、自分の中での社会経験とありのままの日本の状況を先生にお伝えして対話できなかったことは、大きな心残りの1つですね。

 

2点目として、勉強、特に一般教養をもっとしっかり学んでおくべきだったと思っています。家政経済学科の中で言えば経営学だったり、経済学だったり、それは専門科目でもありますが、ある意味で一般教養に繋がるところもあると思っています。

社会に出て仕事や運営に関わっていこうとしたときに、哲学や宗教学、医学や経済学、経営学などさまざまな幅広い学問分野がベースにあるともっと発想が広がるだろうな、と感じています。

 

3点目として、語学です。最初勤めていた旅行会社では、コミュニケーションって語学ができなくても度胸と人への関心があれば成立はするし、それでいいと思っていました。でも育て上げネットに移って海外に出張に行った時には、自分の語学力が、自分が関わっている社会活動の意義を伝えたり、対等に意見交換したりするレベルとしては不十分で、もったいないと感じました。将来の選択肢を広げるために、語学は記憶力が高いうちに身に付けておくと後悔が無いかなという気がします。

 

4点目として、海外に出られることをオススメします。今、こういう世の中(コロナ禍)になってしまっていますが、落ち着いたらぜひ、日本の中で閉ざされてしまうより、いろんな国の文化にリアルで触れ、そこに飛び込んでみるという機会をたくさん持てるとよいと思います。元旅行会社社員としても、「旅のチカラ」はオススメしたいです。

 

5点目として、日常のちょっとしたことに疑問を持つって大事だなと思っています。人口減少社会の中で経済の持続についても考えなければならない時代にみなさんは生きています。資本主義の限界を克服する新しい仕組みが求められた時に、NPOがその大切な役割を担うのでは?という課題意識を持っています。

持続可能性はとても大切で、その実現のためには生活と経済の間の良い循環が生まれるような仕組みを作らないといけないんじゃないかという思いがあります。

 

わたしの場合は、家政経済学科とはこれだけ生活と社会課題と直結した学問だったんだということに卒業してから気付くことになりました。在校生の皆さんには、ぜひそういったところに自信を持って学んでいただけたらうれしいです。

第6回家政学部賞 授賞式(2013年)※後列右から3番目


いかがでしたでしょうか。

 

今回で深谷さんのインタビュー連載は終了となります。改めまして、深谷さんにはお忙しい中、インタビューにご協力いただいたことに心から御礼申し上げます。

家政経済学科の皆さんには、学科での学びと社会人としての活躍の間のつながりが少しでも伝わっていましたら幸いです。

 

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

 

(家政経済学科3年生 A.T/R.T)