卒業生にお聞きしました!


第3回

就職活動とキャリア・チェンジ編


第3回では、深谷さんが大学卒業後、どのようなお仕事をして、どのように経験を積んでいらしたのかについておうかがいします。

 

 

―大学生として就職活動をされていた当時の、将来の夢ややりたいことは何でしたか。

 

深谷さん:正直に言うと、特に明確な夢はありませんでした。当時は今のようなキャリア教育といったものもなくて、経済的にも自立して生活するために、大学を卒業したらまずは仕事につくものだと思っていました。

ただし、大学時代のアルバイト経験や人とのかかわりが好きなことから、人をもてなして喜んでもらうような、みんながハッピーになるようなそんな仕事がいいなとは思っていました。人を喜ばせる、人と関わるという点が、最初に勤めた旅行会社への就職の決め手になったのかな。

 

―なるほど。最初に大手旅行会社にお勤めになったんですね。

大手旅行会社で学べたことやこの会社でよかったなと思うことがあれば教えてください。

 

深谷さん:配属先の上長との出会いがとても大きかったです。その方は、新しい旅行会社のビジネスモデルを創られた方だったので、旅行商品をどう売るかだけではなくて、その商品を売るための「仕事のしくみをつくる」には何をすべきかを教えて頂きました。今、企業はSDGsへの取り組みが問われていますが、企業の社会的責任やCSRにつながる活動などに早くから目を向けている方でいらっしゃいました。1990年代中盤という非常に早い時期から「深谷さん、これからはNPOの時代だよ」というふうに何かにつけ、おっしゃっていた方なんです。その方の近くでお仕事をさせていただいて、「先を見据えた、いろいろな思考」を経験させていただきました。

しかし就職して2年目ぐらいに、実は転職活動して辞めようかと思った時期もありました(実際には辞めずに続けていましたが……)。私の代は男女雇用機会均等法施行1期生にあたるんですが、表向きには男女平等といわれながらも、待遇面や労働環境は全然追いついていなくて。もやもやすることが多かったんです。

 

-やはり、自分がやりたいことがあって会社に入っても現実の仕事や環境とはギャップがあるようですね。そのような労働環境で大学時代の経験が生きたということはありましたか。

 

深谷さん:様々なアルバイトや学外の経験があったので(大学生活編を参照)、敬語の使い方や人との接し方などを身に着けていたことは、アピールポイントであったかなと思います。私が経験したアルバイトは、丁寧なトレーニングや人材育成のプログラムのある仕事でした。

 

―大学時代に様々なことを経験する大切さが改めて分かりました。

先程のお話の中で、実際には就職して2年目ぐらいの時期に転職されなかったとのことですが、仕事を続けようと思ったきかっけは何でしたか。

 

深谷さん:日本女子大の友人の影響が大きかったですね。転職を視野に入れている時に、友人とごはんを食べる機会があって相談すると、まず一言目に「もったいないね」と言われたんです。「第1志望で入った会社だし、仕事の話をしてる時って楽しそうなのにね」と。それから、その友人が勤めている会社の実情も話してくれました。「あぁ、そうか。やっぱり隣の芝生が青く見えているのかもしれない」ということがわかり、踏みとどまったんですよ。

 

―社会人になっても、大学時代の友人とご飯に行く関係が続くことは良いですね。何でも相談できる友達を持っていることは自分の人生に大きく関わるのかもしれません。

続いて、実際に転職された時のお話となぜ育て上げネットというNPOを選んだのかについてお聞きしたいです。

 

深谷さん:まず転職の話ですね。転職の理由は2つありました。1つ目は、そのころ、勤め先の会社の経営体制がちょっと変わってくるかもしれないなあという潮流を感じていて、仕事に一区切りつけようかなと思っていたことです。

2つ目は、たまたま父が末期の癌になってしまったために、介護が必要になったことです。

一方で、転職先を「育て上げネット」に決めた理由は、事業型NPOとしての在り方に魅力を感じたことが大きいです。

NPOは、事業型、すなわち、収益も自分たちで上げていきつつ、経営基盤もある程度安定をさせて活動しているタイプと、慈善型、すなわちボランティア的なタイプの2つに大別されます。その当時、すでにアメリカでは民間企業と肩を並べて、就職人気ランキングでベスト10に入ってくるような事業型NPOがありました。日本でもこのような社会課題解決の事業活動がもっと定着すればいいのにといった思いがあって、事業型のNPOに魅力を感じていました。また、若者支援や人材支援というところに興味があって、それらにマッチしたのが「育て上げネット」だったんです。

「育て上げネット」代表理事 工藤啓氏のご著書

(学科専門図書資料室で借りられます)


深谷さんは、転職先である育て上げネットで前職の旅行会社で培った「しくみをつくる」力を武器に、ご活躍されています。大学時代の経験はもちろん、社会での経験もその後に生きてくることが深谷さんのキャリア・チェンジからよく分かりました。

 

次回、第4回は「学科の特色が生きる仕事」です。私たち家政経済学科の特色が生きる仕事はどのようなものなのでしょうか。実際に深谷さんの仕事内容を例に皆さんにお伝えします。

 

次回は2月21日掲載予定です。お楽しみに!

(次回掲載予定日を変更しました。2022.2.10)

 

(家政経済学科3年生 A.T/R.T)